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東日本大震災後の地理空間情報について | FIGについて | 国土調査のあり方について |
地理空間情報の活用について | 筆界特定制度と境界紛争ADRについて | ADR認定土地家屋調査士代理業務について |
首相官邸/司法制度改革推進本部/ADR検討会 配付資料一覧 | 法務省/ADR法検討会 配付資料一覧 | 所有者所在不明土地の解消について |
平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震に伴い停止中の三角点及び水準点の測量成果の改定値を10月31日に公表 |
平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震に伴う地殻変動の大きい地域では、測量の基準となる三角点及び水準点の測量成果を改定する必要があるため、現在、測量成果の公表を停止しています。
当該地域における三角点約1900点及び水準点約1900点の現地測量作業が9月22日に終了しました。現在、この測量結果を基に約4万4千点の三角点位置及び約1900点の水準点標高の計算を進めているところです。今後、大きな余震の発生に伴う地殻変動等がなければ、三角点及び水準点の測量成果の改定値を取りまとめて、10月31日に公表しますのでお知らせします。(資料1,資料2) |
東日本大震災 地理空間情報関連リンク集 | 今般の東日本大震災においては、様々な地理空間情報が、行政、専門家のみならず、被災者、民間、NPO、個人も含めた様々な主体により作成され、これを用いた様々な情報の解析や視覚化などGISの特性を活かした利活用が活発化しており、今後もさらなる整備・活用が進むことが想定されます。 国土政策局においては、東日本大震災に関連する地理空間情報の整備やGISの利活用の状況をリンク集として整理致しました。 東日本大震災関連で作成された様々なデータやGIS活用事例のみならず、これらと重ね合わせることにより様々な分析を可能とするその他のGISデータの在処やGISの活用方法に関する情報なども、本リンク集に掲載しています。 |
平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震」に伴う基準点測量成果の取り扱いについて | 「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震」に伴い、顕著な地殻変動が認められた地域について、三角点、水準点の測量成果の公表を停止しています。 電子基準点は、5月31日から改定成果を公表しました。 →電子基準点成果改定地域図 |
国土地理院東日本大震災調査報告会 | 国土地理院東日本大震災調査報告会が、6月23日(木)、学術総合センター一橋記念講堂(東京都千代田区)において開催された際の配付資料です。 |
地震による地殻変動 | 発表者 国土交通省国土地理院 地理地殻活動研究センター 地理地殻活動総括研究官 今給黎哲郎氏 |
「だいち」(ALOS)を利用した地殻・地盤変動監視 | 発表者 国土交通省国土地理院 測地部宇宙測地課長 石原操氏 |
基準点測量成果の改定 | 発表者 国土交通省国土地理院 測地部測地基準課長補佐 檜山洋平氏 |
震災対応における地理空間情報の提供 | 発表者 国土交通省国土地理院 地理空間情報部 電子国土調整官 佐藤浩氏 |
地理空間情報の活用事例 | 発表者 国土交通省国土地理院 企画部防災企画官 永山透氏 |
復興に向けて整備・提供する地理空間情報 | 発表者 国土交通省国土地理院 企画部企画調整課長補佐 田中博幸氏 |
FIGとは | 国際測量者連盟(FIG)は国際的な非政府組織であり、その目的は、あらゆる分野とその応用において、測量の進歩のために国際的な協力を支援することである。 |
FIGにおける「測量技術者」の定義 | FIGでは「測量技術者」の職務を次のように定めている・・・ |
FIG Commission7 Workshop | 第7分科会-地籍と土地管理2007-2010 作業計画について |
FIG Commission3 Workshop参加報告 | 2009年2月2~4日に開催された第3分科会ワークショップの報告です。 副題:Spatial Information for Sustainable Management of Urban Areas(都市部における継続的な管理のための空間情報) |
FIG Commission2 Workshop参加報告 | 2009年2月26~28日に開催された第2分科会ワークショップの報告です。 |
FIG 2009年次総会報告 | 第32回FIG総会が、2009年5月3日~8日にイスラエル エイラ-ト(Eilat)のDan Hotelで開催されました。 |
FIG 2010年シドニー総会報告 ①全体概要 西修二郎氏 ②COM7関連 藤木政和氏(日調連研究所長) |
2010年度の国際測量者連盟総会がオーストラリア・シドニーで開催されました。 (日本測量者連盟HPへリンク) |
FIG 2011年次総会 in マラケシュ(日本測量者連盟 西修二郎氏報告書) | 今年のFIG 年次総会は2011 年5 月18 日から22 日にかけてモロッコのマラケシュで行われた。マラケシュは世界遺産にも登録されている北アフリカでも最大の旧市街(メディナ)をもち、遠くにアトラス山脈を望むピンク色に統一された町並みが美しい都市である。 (日本測量者連盟HPへリンク) |
国土調査のあり方に関する検討小委員会報告<委員長:清水英範教授> | <国土交通省>国土調査については、現在、平成12年度を初年度とする第5次国土調査事業十箇年計画に基づき、全国で進められているところでありますが、その主要な柱である地籍調査については、平成20年度末の進捗率が全国平均で48%であり、特に、都市部や山村部における遅れが顕著となっております。 このような状況の中、現行の国土調査事業十箇年計画が平成21年度に期末を迎えることから、地籍調査に加え、土地分類調査等も含めた国土調査全体のあり方について検討が必要なため、国土交通省では、国土審議会土地政策分科会企画部会の下に「国土調査のあり方に関する検討小委員会」を設置し、今後の国土調査のあり方について審議が行われてきたところです。 その結果、今般、本小委員会の報告書が取りまとめられましたので、公表します。 |
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国土調査のあり方に関する検討小委員会報告書概要 | |||||
平成22年度国土地理院重点施策(概要) |
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平成22年度国土地理院重点施策(本文) | |||||
平成22年度国土地理院重点施策(参考資料) | |||||
都市における地籍調査の実施状況と推進のための取組について | 平成18年5月国土交通省土地・水資源局国土調査課発表 | ||||
「都市再生街区基本調査の意義とその成果の利活用に思う」 | 東京大学清水英範教授による特別寄稿です。 |
地理空間情報活用推進基本法 | 平成19年5月30日法律第63号 いわゆるNSDI(National Spatial Data Infrastructure)法と呼ばれるものです。 |
地理空間情報活用推進基本計画 | 平成20年4月国土地理院発表資料です。 |
地理空間情報活用推進基本法の概要 | NSDI法の概要を図表化した国土交通省資料です。 |
地理空間情報の活用推進に関する行動計画 | 平成20年8月地理空間情報活用推進会議が発表した行動計画です。 |
地理空間情報活用推進とGISの今後 | 奈良大学文学部地理学科教授碓井照子先生講演の資料です。 |
ISO/TC211について | 地理情報システム(GIS)の国際標準化を目的として、1994年4月に、ISO(国際標準化機構)の211番目の専門委員会としてISO/TC211(地理情報/ジオマティックス)が設置され、地理情報に関する標準の検討を進めています。日本は、当初から投票権のある正式メンバーとして検討に参加しており、2つの作業項目についてはプロジェクトリーダーを担当しました。 国内意見の取りまとめのために、1995年1月に(財)日本測量調査技術協会が、日本工業標準調査会(JISC)から国内審議団体としての認定を受け、ISO/TC211国内委員会および幹事会を設けています。 |
ISO/TC211 Standards Guide | |
国際住所規格に向けて |
筆界特定制度とは | 平成17年4月6日,第162回国会において,不動産登記法等の一部を改正する法律が成立し,同月13日公布されました。この法律により,筆界特定制度が導入されました。 筆界特定制度は,筆界特定登記官が,土地の所有権の登記名義人等の申請により,申請人等に意見及び資料を提出する機会を与えた上,外部専門家である筆界調査委員の意見を踏まえて,筆界の現地における位置を特定する制度です。 |
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新たな土地境界確定制度の創設に関する要綱案 | ついに成案を見るには到らなかった”新たな土地境界「確定」制度”を今一度概観する必要があるだろう。 | ||||||||||||||||||||
ADRとは ~「仲裁」「調停」の基礎知識 |
ADR JAPANでのICC国際仲裁裁判所副所長・弁護士 澤田壽夫氏のコラム。 |
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仲裁ADR法学会 | 仲裁ADR法学会は,仲裁法・ADR法に関する研究発表や情報交換の場を提供することを通じ,仲裁法・ADR法に関する研究や実務の発展に寄与することを目的としております。また,仲裁法の研究者・実務家はもとより,ADR(民事調停・家事調停,行政型・民間型ADRを含む。)に関する法律の研究者やその実務に携わる方,その他これに関心を有する人々に広く門戸を開いた学会です。 | ||||||||||||||||||||
日本行政書士会連合会発行会報記事から「ADR特集」 |
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「ADR認定土地家屋調査士の代理活動についての一考察」 | 小職が日本土地家屋調査士会連合会研究所での研究員研究成果として発表したものです。 アクセスには当事務所発行のパスワードが必要です。 →中間報告はこちら →Abstractはこちら |
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1.ADR認定土地家屋調査士業務概論 文責:ADR認定土地家屋調査士 橋本 伸治 (1)ADR認定土地家屋調査士の業務とは 一般に,ADR手続代理認定土地家屋調査士(以下「認定調査士」という。)は依頼者から受任する前に依頼者の相手方と和解交渉を行うことは許されないと解されるが,次に掲げる事務は原則として認定調査士業務に含まれると解されている(※清水響法務省民事局参事官編著「一問一答 不動産登記法等一部改正法・筆界特定(商事法務)から抜粋)。 ① 裁判外紛争解決手続の代理を受任する際に依頼者からの相談に応ずること。 ② 裁判外紛争解決手続の代理を受任した後,当該手続の開始から終了までの間に依頼者の紛争の相手方と和解のための交渉を行うこと。 ③ 裁判外紛争解決手続で成立した合意に基づき和解契約を締結すること。 ただし,共同受任の趣旨に照らし法律の専門家である弁護士と相談することなく,和解交渉を行うことは後に述べる認定調査士に求められる善管注意義務違反になることがあることに留意する必要がある。 以上を図解すると,以下のようになる(※境界実務研究会著「筆界特定制度-ガイドブック-」(三協法規出版社)から転載した)。 (2)認定調査士が目指す目標 認定調査士業務の究極の最終目的は,依頼人が主張する境界線(所有権界)について,相手方の全面的譲歩(認諾)を導きだし,依頼人の要望を全て満足させる形で相手方と和解契約を締結(調停合意)することに尽きよう。そのためには,認定調査士としての知見をフルに発揮すると同時に,共同受任した弁護士と法律的見解について協議を行いうる法的能力(さらには相手方代理人弁護士と調停期日の席上で交渉を行う能力)を身につけることが求められる。また,前提として,依頼人が紛争事件に潜ませる心理的負担要因を受け止め,分析し,その負担要因を解消または緩和するような心理学的カウンセリング・スキルも求められる。境界紛争が人格紛争と揶揄される中で,人格同士の衝突を如何に解決するかも,境界紛争に係わる私たち認定調査士に求められるものと言える。 (3)司法予防的役割に向けて(提言) 土地家屋調査士のADR手続きは境界紛争が発生した後の事後的な措置だけに限定して捉える必要は無いと考える。むしろ境界紛争を未然に防止することによって,不動産取引が円滑に行われ,日本経済の活性化に繋がることを鑑みれば,ADR業務を司法予防的に拡充する手立てを模索する必要があるであろう。 箱物としての境界センターでの紛争解決手続きを“大文字としてのADR”と称する場合に,これと比較して,認定調査士が日々の境界確認作業・現地立ち会い作業を通じて,依頼人と隣接地権者との意見調整を行い,安定した境界管理に向けた業務遂行を,“小文字としてのadr”となぞらえることがある。ADRの理念を考えるとき,全ての境界紛争は何も境界センターというステージだけで解決されるものではない。紛争性に火が着きかけたその初動段階で,我々認定調査士が,その紛争を未然に防止するという司法予防的役割を担うという意味で,境界確認作業を行うことも立派なADRなのである。 またさらに,別の観点からアプローチするならば,土地所有者と認定調査士とが顧問契約的に締結する境界情報管理委託契約(私案)の推進を行い,境界紛争の発生を認定調査士が監視するシステムを構築することも提案したい。そのためには,不動産業界の理解と協力を仰ぐことも重要であろう。そこでは土地所有者は継続的に認定調査士の助言や管理といったサービスを受けることができ,これによって紛争発生の危険を予知することが可能となり,紛争発生のイエローシグナルが点灯した際には直ちに認定調査士が顧問契約先に相談サービスを提供するなど適切な処置を行うものである。特に遠隔地に住む不在地主との関係で需要を掘り起こすことが可能ではなかろうか。また,土地所有者との契約に限らず,或いはデベロッパーとの契約によって分譲宅地を購入したエンドユーザーへのアフターケアとして,また或いは信託系金融機関との提携により信託を受けた不動産の有効活用の方策として,それぞれ発展的に利用されることも想定できよう。 (4)訴訟代理権の獲得に向けて(連合会がめざすもの) ADR代理人としての認定調査士の活躍の場は現時点ではあくまでも調停手続実施機関である境界センターにおいてのみである。しかし,その後に予定されうる境界に関する訴訟(筆界確定訴訟または所有権確認訴訟)では,必ずしも境界の専門家である土地家屋調査士がシステマティックに訴訟に関与する仕組みが確立されているとは言い難い(民事訴訟法での専門委員制度も現時点では有効に機能しているとは言い難い)ため,時として判決の内容が登記手続きと連携し得ない乖離した事案も見受けられ,判決の更正を求めざるを得ない事案に遭遇する場合がある。 我々認定調査士が究極的に目指すべきは,境界専門裁判所を創設(元日調連会長西本氏提唱)し,そこでの境界訴訟における独立した訴訟代理権の獲得であろう(連合会はその他境界専門訴訟での出廷陳述権獲得を目指している模様である)。そのためのハードルは眼前に高くそびえ立っているが,ADR代理業務を通じてリーガル・マインドを涵養し,訴訟活動に耐えうる知識と素養,そして何よりも社会的信頼性を身につけることが今後の我々認定調査士に求められていると言えよう。 そのためには,ADR認定調査士という資格が,単純にADR業務を行えるためのライセンスであるという意識に拘らず,遍く全ての土地家屋調査士がその資格を身につけ,通常業務である境界立会業務に於いてでも,認定資格を勝ち取るために受講した特別研修,さらには認定後のフォローアップ研修で培った知識と経験を発揮することによって,日本で唯一無二の境界専門家という立場を社会的に獲得するための弛まぬ努力が求められる。 (5)法改正に向けて 不動産登記法等の一部を改正する法律(平成17年4月13日法律第29号)附則第10条において,「(検討)政府は,この法律の施行後五年を経過した場合において,この法律の施行の状況等を勘案し,新土地家屋調査士法第三条第二項に規定する民間紛争解決手続代理関係業務に係る制度について検討を加え,必要があると認めるときは,その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。」とあるように,認定調査士制度の再検討が予定されている。現在のようにその活用がほぼ皆無に近い事実(愛媛・兵庫で代理の実績がある)を前にして,この附則の定めの持つ意味は極めて大きいと言わざるを得ない。箱物としての境界センターは数的にはほぼ整備されたとしても,そこで活躍を予定された認定調査士の実績が確認されない,または境界センターが社会的に信頼される状況に無いとしたら,認定調査士制度の存廃評価に大きく影響することは容易に想像できる。 「良い資質を持っている弁護士は良い解決をもたらすし,良い資質を持たない弁護士はろくな解決をもたらさない」と言われる(※廣田尚久著「紛争解決学」から引用した)。ここでの資質とは先天的に兼ね備えたものを指すと同時に,後天的に修得する経験や能力も含まれると解釈できる。これは認定調査士にもそのまま当てはまると言えよう。後天的な資質の向上は我々専門家に課された使命であるとも言える。 また,『「よくできる法律実務家」とは,知識が深く,広く,技能が高度であり,見識も高い人であり,「あるべき法律実務家」とは,知識・技能・見識が一定水準に達しており,それらにバランスがとれている人である』(加藤新太郎編「リーガル・コミュニケーション」(弘文堂出版)はしがきから引用。)と言われる。私たち認定調査士も,「よくできる認定調査士」,「あるべき認定調査士」へと飛躍し,リーガル・サービサーとして社会的に確固たる地位を築かなければ,土地家屋調査士型ADRそのものが後退を迫られる危険性を孕んでいることに想いを致し,制度発展のために更なる実績の上積みを期待したい。 そのためにこそ,我々認定調査士は,境界問題で悩みを抱える土地所有者の方へ躊躇することなく暖かい手を差し伸べ,積極的にその責務を全うしなければならない。 (6)境界ADR型LADM(土地管理領域モデル)(提言) LADM(Land Administration Domain Model)とは,土地に影響を及ぼす権利・責任・制限に関連する土地行政(法的要素),及びその地理的要素(空間的要素)を包括的に規定する概念図式であると言われている(※連合会研究所剣持智美研究員の論文から引用した)。平たく言えば,人と土地との関係をモデル化するシステムである。今や測量の世界的な趨勢は,「測定(measurement)」から「管理(management)」へと大きく変わり,世界中の空間データを取得・管理できる真にグローバルな基盤としての測位基盤が発達し,持続可能な開発を支える土地政策・土地管理戦略を実施するための土地行政システム(land administration system)という考え方が定着している時代である。2011年6月には,LADMの国際規格発行を目指してFIG(国際測量者連盟)を中心に様々な議論が展開されている。 境界紛争ADRの世界に於いても,こうした管理システムの標準化は世界が求めるテーマの一つとなり得よう。特に,土地の利用に影響を及ぼす「権利」という属性を管理する側面から見れば,ある土地の権利関係が安定した状態であるか紛争属性のある土地であるか否かは,管理システム上大きなウェートを占めるはずである。境界紛争が起きている,または過去に起きていた土地の情報を,その紛争の範囲の地理的空間情報を含め,紛争の当事者・その経緯と結果・今後への影響の度合いと言った属性と共に管理されるならば,土地を統治する局面で様々な付加価値を持ちうるし,市場経済にとっても有益な情報となる。しかも,ADRで解決された後の土地情報が管理され蓄積されていけば,自ずと筆界との乖離情報も究極的には一元管理されることもあり得よう。これはインフラ整備を試みる行政体にとっては極めて魅力的な情報となる。 しかし,ある土地に於いて境界紛争が存在した,または存在しているという事実は,極めて個人情報性の高い属性であるために,その情報の取り扱いには事前に当事者の同意を得ておく等慎重を来す必要がある。こうした丁寧な配慮がなされた上で,境界紛争の属性が地籍情報の一要素として管理領域モデルに集約されるならば,土地の持続的発展に大きく貢献するものとなるであろう。 |
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2.ADR認定土地家屋調査士相談業務の実務 文責:ADR認定土地家屋調査士 橋本 伸治 (1)相談業務の特性 相談業務は,認定調査士(に限らずほぼ全ての隣接法律専門職種資格者)と一般市民とが初めて接触する重要な一局面であり,この相談業務において相談者と確固たる強い信頼関係が形成されないと,次のステップであるADR代理業務へ繋がることは極めて困難となる。そのため,相談者に対して十分満足・納得のいく相談を実施することは,認定調査士の社会的評価を高め,相談業務に引き続くADR代理業務を円滑に進める上でも重要な意味を持つものである。 また,土地所有者である一般市民は,情報過多の時代といわれる昨今であっても,境界に関する的確な知識に未だ乏しいケースが多く見受けられ,土地所有者が自助努力によって境界問題を乗り越えることは困難なケースが多い。従って,認定調査士が適切かつ満足のいく相談を実施することは,一般市民が自立的に境界紛争を解決する際の重要な援助手段でもある。 認定調査士の行う相談業務が相談者への援助手段であるとすれば,相談時における認定調査士と相談者との間で交わされるコミュニケーションは大変重要な意義を持つ。そこでのコミュニケーションがしっかりと行われ,相談者のニーズを漏らすことなく汲み取り,満足のいく相談を実施するためには,面接技術(リーガル・カウンセリング)の習得も必須のスキルであり,事前の十分な研鑽が必要である(別掲1「相談・面接技法(入門編)」を是非とも参照いただきたい)。ロールプレー方式での研修は,リーガル・カウンセリング・スキルを習得しアップさせるうえで極めて効果的な研修方法の一つであろう。 また,相談業務におけるカウンセリングという要素を考察するとき,臨床心理学における「相談」や「援助」に関する研究の成果は,認定調査士が実施する相談業務に多くの示唆を与えるものである。別掲1で引用した「法律相談のための面接技法」(日弁連法律相談センター面接技術研究会著)でも触れているように,専門家が従来行ってきた相談が,コンサルティション型相談(専門家が一方的に評価し,単なる知識の提供をするという手法)の傾向にあったように,専門家が一種権威的に専門知識を振りかざすことがあり,専門家の独善に陥り,結果として相談者のニーズを十分汲み取れず,相談者にとって未消化状態で相談が終了してしまいがちであった。これでは到底相談者と強い信頼関係を構築することはほど遠い。 臨床心理学の世界でも,法律相談における援助の方法を研究する動向が現れてきている。平成22年11月12日関東ブロック協議会主催のADR11研修会において,臨床心理士原田杏子氏(千葉少年鑑別所法務技官兼法務教官)を講師に迎え,「専門職における相談援助活動」の講演会が開催された。原田氏は日弁連法律相談センター「面接技術研究会」と協働しながら,法律実務における相談援助活動の研究にも携わっており,その著書「専門職としての相談援助活動」(東京大学出版会)においてその研究成果が発表されている。そのはしがきの一節に,「法律実務家の現場の空気は,筆者にとって非常に刺激的なものでした。というのも,彼らは“カウンセリングという未知のものを知りたい”というより,“カウンセリングの技術を使おうと思うけれど,そのままでは現場になじまない”というところで試行錯誤していたのです。・・・<中略>・・・つまり,“相手の話を聴く”コミュニケーション技法は,法律相談の現場で必要とされているにもかかわらず,そのままの形では適用が難しいというのです。これは心理学にとって重要な問題提起ではないだろうか」と自問自答され研究の端緒に辿り着いたようである。 講演会に於いて,会場の参加者に協力いただき相談業務のロールプレーが披露され,それをコメンテーター役が感想を述べ,さらには会場全体が観察者として評価するというスタイルが取られた。模擬相談などのロールプレーにおいては,直接の相談者役・相談員役のみならず第三者的コメンテーター役を設定しロールプレー全体を客観的に評価するシステムが取られれば,ロールプレーの資質向上に繋がるであろう。 更に原田氏は,相談業務自体には「調査面接」の側面と,「相談面接」の側面があると指摘する。「調査面接」においては,主導権は主に専門家である相談員側にあり,相談者から「訊く」ことが中心となり,相談者の話を引き出し,情報を収集し,判断する作業がメインとなる。そこでの面接は,専門家の指導・管理・選別のための面接となる。一方,「相談面接」においては,主導権は利用者である相談者側にあり,相談員が「聴く」ことが中心となり,相談員が相談者の語りに耳を傾け,相談者が語りを生み出すのを援助する立場となる。そこでの面接は,相談者が気づき,自信を持ち,判断し,行動するのを援助するための面接となる。この「調査面接」は主に相談員が情報を収集し専門家としての判断形成を行う局面で利用されよう。「相談面接」は主に相談員が相談の導入部から相談者との問題の共有,協働関係の形成,解決方針をめぐる交渉と同意を得る局面で利用されよう。こうした「調査面接」・「相談面接」の2側面の意識的な使い分けも重要かつ必要なスキルと言える。 また,原田氏は「専門的相談は権力関係である(になりがちである)」と指摘する。専門家は社会的な力を有し,社会から守られているため,利用者は弱者として専門家を頼る立場にあり,そこで利用者に不満が残ると“隠れた”呟きとなり,専門家は「裸の王様」になりかねないと警告する。従来の専門家相談はこのようにいわば利用者と上下関係にあったが,時代は利用者が中心であり,利用者との水平関係つまりは協働関係へ転換を図らないと専門家相談は利用者にいずれ見放されよう。そのためには原田氏は「①秘密を守る態度で,②暖かみのある態度で,③利用者に敬意を払い,④無条件の肯定的配慮を持って(専門家の枠組みで利用者を判断しない),⑤相談利用者の心情への配慮を持って,⑥枠組を意識した相談を行う(専門家としての目的と自覚を持った相談を展開する)」ことが相談援助活動での基本姿勢であると指摘する。 こうした相談者の心理的作用を十分に習得した上で,日々の相談業務に望むことがこれからの専門家相談には求められるものである。 (2)「依頼の趣旨」を把握する事の重要性 相談を受ける際に,最初に留意しておかなければならないのは,相談者が何を認定調査士に望んでいるのか,要するに「依頼の趣旨」は何であるかを的確に把握する事である。 通常,境界問題で悩みを抱え専門家の門を叩くのは,何がしかの権利を侵害されたと認識している「被害者」である。被害者たる相談者は,境界紛争の局面に直面したとき,初めての事であったり突然の事であったりして,気が動転し,不安に駆られることが多い。そのような状況下では,我々専門家に対して,自分の苦しみや悲しみなど感情面のみを訴えがちであり,事実の整理がうまくできずに悩みを増幅させていることが多い。 また,仮に依頼の趣旨を明確に意思表示したとしても,それが直ちに依頼者の真意であるとは限らない。事実の整理・論点の整理が出来ていない状態で,安直な解決策に取りすがろうとしたり,相手方にとって交渉の余地の絶対にない,極めて受け容れがたい解決策に固執することもある。 認定調査士としては,相談者の紛争内容に耳を傾け,時には相談者の立場になって共に苦しみ,悲しみ,時には相談者の立場から少し離れて,専門家の立場で法的に物事を考える。相談者の立場と専門家の立場との相互作用によって依頼の趣旨が浮かび上がってくるのである。そうして把握される依頼の趣旨は,相談者の真意に叶うこととなり,専門家も法的な正義の観点から適切な相談業務を提供しうるものとなりえる。 (3)相談業務の具体的対応 相談業務の具体的対応を考察してみる。土地所有者から土地境界に関する紛争について相談を受けた場合に,具体的には以下のような対応が考えられる(相談時には,別掲「ADR相談シート(私案)」を利用すると良い)。 ① 依頼者の相談内容を聴く(傾聴)。 時に,依頼者自らが最終的に何の解決を望んでいるのか理解していない場合もあり 得る。 そのためには ・依頼者が侵害されている利益 ・依頼者が要求する主張内容 ・心理的要因として,相談者の当該土地への執着の度合い ・過去における相手方と境界問題以外でのトラブルの有無 を的確に見極める必要がある。 ② 事実関係を把握・交通整理する。 このために, ・各種公証資料の調査・収集・分析を行う。 ・依頼者所持資料の調査・分析を行う。 ・現地調査,特に境界標識の存否と設置の経緯,囲障・構造物などの現況,占有状況,の把握を行う。必要に応じて現地測量を実施する。 ・過去から現在に到るまでの占有状況の経緯を調査する(航空写真の入手)。 ・相手方との紛争の程度(対立の深さ)を把握する。 ③ 以上①②によって(または同時進行で),相談事案に関して認定調査士に相談者(及び相手方についても)と利益相反の事実(土地家屋調査士法第22条の2に規定する事件・土地家屋調査士倫理規定第24条乃至第26条に規定する事件)が無いかを確認する。利益相反事実の存在が確認された場合には,その理由を相談者に説明し,直ちに相談を中止しなければならない。また,その際には,境界センターの相談会をアナウンスする等適切なアフターケアが必要である。 ④ 相談内容が筆界のみに関するものであるのか,所有権界その他私法上の境界に関するものであるのか,又はその混合型であるのかの判断を行う。筆界のみに関する場合には筆界特定制度利用の告知を行い,筆界特定申請代理に向けた行動が必要とされるが,両者を包含する混合型事件に関しては,調査士会ADRと筆界特定制度の連携を構築しているので,境界センターへの調停申立手続きの中で,筆界特定手続きとの連携(手続き移行)も視野に入れた受託を心掛けるべきであろう。 ただし, 依頼者からの聞き取り調査のみでは、筆界・所有権界いずれの紛争であるか判然としない場合もあるので, 一定程度の現地調査を経て判断する事もありえよう。 ⑤ 隣接地権者(相手方)の主張内容を可能な限り確認する。この場合,相手方と直接面談し相手方主張境界線の確認をすること自体は相談業務として可能であると考える。ただし,紛争内容に関わる和解案の提示等交渉行為は一切行うことができないことに注意を要する。 ⑥ 依頼者が主張する境界線の当否を判断し,紛争解決に向けた助言の提供を行う。 特に取得時効の成立が考えられる場合には,その可能性の判断について慎重な考慮を要する。 <民法上の成立要件>
取得時効の成否を検討する際には、特に次の点に注意する。
<抗弁> 短期時効取得の主張に対する抗弁としては・・・ (例) ・所有の意思がなかった(他主占有であった)。 ・占有の始めに悪意であった。 ・占有が中断した。 ・過失があった(無過失の評価障害事実があった)。 <抗弁> 長期時効取得の主張に対する抗弁としては・・・ (例) ・所有の意思がなかった(他主占有であった)。 ・占有が中断した。 ⑦ 相手方が話し合いに応諾する可能性があるか否かを確認する。応諾の余地がある場合には,境界センターでの調停申立手続きの告知を行う。 ⑧ 相手方に応諾の余地が見られず,他の手続きによる解決を望む場合には,弁護士の紹介など適切なスクリーンを行う。なお,相手方応諾の余地が無くても境界センターへの調停申立を希望される場合には,調停申立費用負担の問題を告知して受託することを心掛ける。 ⑨ 助言の内容が的確に依頼者に伝わっているのか,正確に理解しているのかを確認する。 また, 相談実施後に依頼者の満足度を確認する。何が満足させ,何が不足で,何が適切でなかったか,その改善点は何か,などをフィードバックすることが今後の相談業務の資質向上に重要であろう。相談業務終了後にアンケート用紙を配布し返送をお願いすることも考えられよう。 (4)相談業務に関する推薦図書 ① 法律相談のための面接技法~日弁連法律相談センター面接技術研究会 ② 調停者ハンドブック~レビン小林久子 ③ リーガル・カウンセリングの技法~中村芳彦・和田仁孝 ④ リーガル・コミュニケーション~加藤新太郎 ⑤ 専門職としての相談援助活動~原田杏子 ⑥ 和解技術論~草野芳郎 |
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3.ADR認定土地家屋調査士代理業務の実務 文責:ADR認定土地家屋調査士 橋本 伸治 (1)代理の基本原則 そもそも代理とは,民法第99条以下で規定しているとおり,代理をしようとする者がその権限内において本人のためにすることを示して(顕名)意思表示を行うことにより法律行為を行い,その効果が直接本人に帰属する制度である。 ADR代理は任意代理(委任による代理)であるから,本人から代理人へ代理権を授与するという授権行為が必要となる。具体的には,本人から代理人へ委任状を交付することによってなされる(委任状の記載例としては別掲のようなものが想定される)。ただし,委任状は登記申請書におけると同様に調停申立書に添付する目的で作成されるものが殆どであり,委任契約の内容に疑義が生じたり後日のトラブルを回避するためにも,別途委任契約書を取り交わしておくことが必要である。 なお,弁護士との共同受任については,共同代理とは異なり,常に弁護士と共同して代理権を行使する必要は無く,代理権の内容自体を制限するものではない。しかし,後に述べる善管注意義務違反が問われる場面もありうるので注意を要する。 (2)代理の要件 代理の効果が本人に帰属するには以下の要件が必要となる。 ①本人の権利能力 ②有効な代理権の存在 ③顕名 ④代理行為 特に注意を要すべきは,本人の能力の有無,特に意思能力の存否の判断である。土地所有者は高齢者であるケースが多く,認知症などの理由で判断能力が不十分である場合は,意思能力の欠缺により代理行為の効果が発生しない虞がありうるので,成年後見制度*1を利用するなどの対応も検討しなければならない。 (3)代理人の義務 ADR代理業務は委任契約に基づく代理であるから,代理人(受任者)には民法上以下のような義務が発生するものと考えられる。 ①善管注意義務 受任者は委任の事務処理を遂行する際に,委任契約の本旨に従い,善良なる管理者の注意義務をもって事に当たらなければならない(民法第644条)。受任者の中心的義務である。善管注意義務の程度は受任者の職業や能力によって異なるとされるが,隣接法律専門職種である認定調査士には,一般的な善管注意義務よりも高度な義務が求められると考えられる。 特に弁護士との必要的共同受任を条件として付されている以上,代理活動を行うに際しては,必要的共同受任の趣旨に反するような代理活動(例えば,法律問題に関して弁護士と相談することなく単独で主張を行ったり相手方と和解交渉を行うこと)を行ってはならず,弁護士と常に緊密な連絡を取り合い,十分に相談・協議を尽くす必要があることに注意を要する。 なお,弁護士と意見が衝突し意見調整が事実上不可能な場合には,適切な代理業務を継続することが困難であるので,依頼者に十分な説明を行い辞任する場合もありえよう。 ②自ら事務を処理する義務 委任契約は当事者の信頼関係を根幹とするため,受任者は自ら事務を処理する義務を負うのであって,委任契約の民法規定から復委任(受任者が委任された事務を誰か他の人間に処理させること)という概念は出てこない。ただし,補助者として他人を使う場合は別である。なお,民法に復委任の規定は存在しないので,委任契約関係と復委任の概念とは直接に繋がらないが,代理人の復任権に関する規定が類推適用されて,復委任は認められている*2。委任者の許諾がある場合,或いはやむを得ない事由がある場合には,復委任は成立し得るとされている。 ③報告義務 受任者は委任者の請求があった場合や委任契約が終了した場合には事務処理の経過を報告しなければならない(民法第645条)。認定調査士にあっては,調停手続きの進行状況,その結果を報告する必要があろう。特に調停合意に於いて履行義務を定めた場合は委任者からの請求如何に関わらず速やかに依頼者へ報告すべきである。 ④受取物等引渡義務 受任者は委任された事務を処理することで取得した金銭(例えば和解清算金)などの物と果実を委任者に引き渡さねばならない(民法第646条1項)。 受取物等引渡義務の対象となる金銭や委任者のために使うべき金銭を勝手に消費した場合には,消費した日からの利息支払と損害賠償をする責任が課せられる(民法第647条)。 ⑤取得権利移転義務 受任者は委任者のために自分を主体として取得した権利を委任者に移転しなければならない(民法第646条2項)。 (4)受任に際しての注意事項 ①最初に,当該事件が,ADRに適した紛争の熟度にあるのかを確認することが必要である。すなわち,相談業務を通じて依頼者と認定調査士とに十分な信頼関係が構築されているのか,また,そもそも依頼者と相手方との間に,境界センターへの調停申立を要しない程度の協調関係は残されていないのか,を確認すべきである。境界センターへ一旦調停申立がなされると,依頼者と相手方両者間の心理面を刺激し,対立意識を一層激化する虞があることを十分認識した上で,受任するよう心掛ける必要があろう。 ②依頼者に境界センターでの調停手続きのフロー・事件進行の見通し・費用・センター手続きでの法律的効果(特に合意成立した場合の法的効果)について,事前に十分な説明がなされていることが必要である。特に費用については,境界センターにおける手続き費用(調停申立費用・調停期日費用・合意時の成立手数料・現地測量費用・境界標識設置費用・登記申請費用など)はもとより,代理人となる認定調査士及び弁護士への報酬額を可能な限り事前に呈示することが必要であろう。また,境界センターでの調停手続きが不調に終わった場合の事後的な選択肢についても予め説明しておくことが求められる。 また,法務大臣認証を得ている境界センターでの調停手続きについては,ADR法上の特則効果についても事前の説明が必要であろう。 ③土地家屋調査士倫理規程(平成21年6月15日・16日日調連定時総会決議。解説は日調連作成のものから引用)において,特に注意を要するものとして以下の事項が挙げられる。 (見込みがない事件の受任) 第27条 調査士は,依頼者の期待するような結果を得る見込みがないことが明らか であるのに,あたかもその見込みがあるかのように装って事件を受任してはならな い。 【解説】調査士は,依頼者の期待する結果が得られる見込みがないことが客観的に認められ,調査士もそのような主観的認識を有しているにもかかわらず事件を受任する行為は,不当な手段を用いて事件を受任したことになる。 (有利な結果の請け合い等) 第28条 調査士は,事件について,依頼者に有利な結果を請け合い,又は保証して はならない。 【解説】調査士は,依頼者に対し,事件の結果の予測について意見を告知することがあるが,調査士業務は,一定の有利な結果を保証して行う性格の業務ではない。このようなことを請け負ったり保証するという行為は,調査士の使命に反すると同時に,不正な行為を誘因させるおそれがある。 (相手方本人との直接交渉等) 第50条 調査士は,受任した筆界特定手続又は民間紛争解決手続に関し,相手方に代理人があるときは,特別の事情がない限り,その代理人の了承を得ないで相手方本人と直接交渉してはならない。 2 調査士は,前項の場合において,相手方に代理人がないときは,その無知又は 誤解に乗じて相手方を不当に不利益に陥れてはならない。 【解説】相手方には,調査士以外にも弁護士,司法書士が代理人として選任される。相手方がそうした専門家に交渉を依頼しているのに,代理人を介さず,直接交渉することは,相手方本人を不利益に陥れるおそれがあるばかりでなく,相手方代理人をその依頼者との関係に影響を与え信義則に反する。 (民間紛争解決手続の代理関係業務の遂行) 第53条 調査士は,受任した民間紛争解決手続の代理関係業務は,共同で受任した 弁護士と十分な意見交換等を行い,事件の管理に十分な注意を払い,業務を行わな ければならない。 【解説】弁護士との共同受任の趣旨に反するような行為(例えば法律問題について弁護士と相談することなく主張を行うこと)はできない。弁護士との意思疎通と調査士が民間紛争解決手続の代理人としての立場を踏まえて,業務することを求める規定である。(ここでは,代理関係業務とし,民間紛争解決手続きの手続き実施者の立場と区別している。) (共同受任弁護士との意見不一致) 第54条 調査士は,民間紛争解決手続の事件において,共同で受任した弁護士との 間に事件の処理について意見が一致しない等により辞任を申し出るときは,あらか じめ依頼者に対し,その事情を説明しなければならない。 【解説】民間紛争解決手続事件における調査士の代理権は,弁護士と共同受任が行われている場合に限られている。事件の処理手法や手順や証拠等の判断で意見がかみ合わないなどで,事件処理を継続できない場合の必要な措置を規定した。 ただし,当事者の一方にとって不利な時期に委任契約を解除した場合で,かつ,そのことにやむを得ない事情があるわけではない場合には損害賠償義務が生じる(民法651条2項)ので注意が必要である。 (5)受任の具体的対応 受任における認定調査士の具体的代理活動としては,以下のような対応が考えられる。
境界問題解決センターとちぎ 諸費用
<申立人からの委任状:サンプル>
<応諾する場合の相手方からの委任状:サンプル>
(6)委任終了後の対応 境界センターでの調停手続きは,必ずしも両当事者が円満に納得して解決される場合が全てではなく,不本意ながら両当事者の合意に達せず調停不調になる場合や,当事者の一方が取下げまたは終了の申し出により一方的に手続きが終了する場合も想定できよう。 その際の事後処理としては,依頼者が解決手続きの続行を希望するのであれば,訴訟提起(または民事調停申立)を検討することになろう。この場合,代理人としての認定調査士の活動は厳密にはこの時点で終了となるが,共同受任した弁護士との連携により,私的鑑定人という立場で訴訟活動(または民事調停手続き)に協力することは十分可能であり,また,協力すべき責任が認定調査士に求められるであろう。 (7)ADR認定土地家屋調査士と境界センターとの連携 以上は認定調査士が依頼者の立場に添った代理業務についての考察であったが,ADR手続き実施者である境界センターとの連携はどのように図ることが可能であろうか。 栃木会境界センターにおいては,その手続き実施者である調査士相談員・調査士調停員のほとんどが認定調査士に就いて頂いており,調停手続きを実施する前の受付面談手続において,相談者と面談して相談内容を聴き,事案を把握して争点整理を行い,以後の調停手続きを利用するか否か,利用可能か否か,のスクリーニングを行っている。その後,調停申立てがなされた場合には,公平の観点から相手方にも申立者と同様に受付面談手続の機会をシステム的に付与するため相談の案内を行っているが,ここで境界センターでの相談ではなく,認定調査士の利用を促す案内を行うシステムを構築したいと考えている。また,相手方に限らず,相談者にも受付面談手続後の継続的な相談サービスが受けられるよう,認定調査士の活用を案内する方策も考えられる。 境界センターの第一次的存在理由は調停手続きにおける紛争解決にあると考えるならば,相談サービスを境界センターに求めるのか,認定調査士に求めるのかは,利用者側に選択権が与えられなければならないであろう。また,境界センターが一当事者側に寄り添った相談サービスを提供することは,公平中立の観点からすると疑義が生じるとも考えられ得ることから,同様の結論が導き出されると考える。 |
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4.ADR認定土地家屋調査士と筆界特定制度との連携 文責:ADR認定土地家屋調査士 橋本 伸治 (1)連携への模索 ADR手続きと筆界特定手続きとの連携については,愛媛大学和田直人講師(現静岡大学准教授)が以下のように提唱しており傾聴に値しよう。すなわち,「登記官による認定(中立評価)手続として筆界特定制度が担うべき役割と,調整型手続としてのADR手続が担うべき役割とを明確に設定した上で,相互の手続の協力の在り方を模索していく」べきと提唱されている。 その具体的方策としては, ①手続の入り口段階で事案をスクリーンする際の連携と協力 ②筆界特定手続とADR手続とで作成された記録・資料の活用 より具体的には, ア:ADR手続きで作成された資料を積極的に筆界特定手続きの中で活用する, イ:ADR手続きが実施された中で,筆界特定制度を外部鑑定手続きとして利用する を提唱されている。 ADR手続きと筆界特定手続きのいずれも,土地家屋調査士が関与する境界紛争解決手続きの両輪であり,これらの連携は法務局の協力を仰ぐことが可能であれば,特段の法改正を待たなくとも運用に於いて十分実行可能であると考えられた。特に和田直人准教授が唱える,「筆界の判断は境界センターの鑑定作業においてではなく外部鑑定手続きとして筆界特定制度を活用すべし」との意味は重く,境界センターにおいて十分な検討が必要とされるところである。 では,認定調査士の代理活動に於いては,筆界特定制度とどのような連携が考えられるであろうか。 ADR手続きに於いて対象とされる紛争が「土地の筆界が現地において明らかでないことを原因とする民事に関する紛争」であることから,筆界の問題と所有権界の問題は密接に関係してくる。特に,取得時効の成立が問題となる事案に於いて,筆界が特定されていないと当然時効取得する所有権の範囲も特定できず,その成立の主張そのものが極めて困難となる。そこで,一つとしては,私的鑑定の一態様として,代理人となる認定調査士が現地測量を行い,意見書として筆界を鑑定した上で,調停手続きに於いて所有権界の主張を行う場面である。他方としては,調停申立てを行う前に,筆界特定申請を行い,外部鑑定として筆界特定を受け,その結果をもって調停申立てを行う場面である。しかし,後者の場合には,特に取得時効の成立が争点となっているケースでは,筆界特定申請から特定に到るまで相当の期間を要する現状(標準処理期間として約6か月)を鑑みると,その間に時効が進行し調停手続きにおける請求内容に重大な影響を及ぼしかねないことが懸念される。ADR法に基づく法務大臣認証を受けた境界センターであれば調停申立てに時効中断の効果が付与されるので,当事者間で調停手続きを一旦保留し筆界特定の結果を待って調停手続きを続行するとの合意が得られればその懸念は払拭されようが,果たしてその合意が得られるかは不明であろう。従って,代理人としては事前に戦略的な見極めを迫られることになる。 次に,調停手続きによって所有権の取得時効の合意がなされ,作成された和解契約書(合意書)において,所有権を取得した土地の部分が具体的に明示されている場合(測量図を用いた厳密な特定までは要しないが,一筆の土地のどの部分を取得したのかについて全く具体性を欠く場合は除かれる)には,当該和解契約書は土地の一部について所有権を取得したことを証する情報となると解される*1ので,時効取得した者は,不動産登記規則第209条第1項第5号で定める「土地の一部について所有権を取得した者」に該当し,筆界特定の申請を行うことができる。 この取り扱いを反対解釈すると,民間ADR手続きにおける所有権の範囲に関する合意書では,一定の筆界の評価がなされ所有権の範囲に関してある程度の特定がなされていれば筆界特定における当事者適格の証拠とされるものであるから,調停手続きに於いては厳密な筆界の特定がなされていなくとも,境界センターにおける中間的内部評価として筆界鑑定を行い,所有権の範囲の帰属に関する合意の後に筆界特定申請を予定し,その特定(終局的外部評価)をもって取得した所有権の範囲に関する分筆登記及び所有権移転登記の措置を講ずる旨の二段の合意がなされれば,十分その目的を達することができると言えよう。認定調査士として,このような戦術が可能であるかを検討することは無意味ではあるまい。 (2)連携の具体化 土地家屋調査士会ADRと法務局筆界特定制度とが,裁判外の境界紛争解決制度の両輪であることから,両者の効果的かつ有機的な相互連携を図るために,平成22年3月29日,法務省民事局民事第二課・日本土地家屋調査士会連合会とによる「筆界特定制度と土地家屋調査士会ADRとの連携に関する検討取りまとめ」が各単位会に示され,「(1)事前相談における連携,(2)手続移行における連携,(3)情報の共有における連携,(4)広報における連携」が提唱されたことは注目に値する。この連携は,前述した和田直人准教授の論文での主張に見事に沿った内容であり,和田准教授の論文を参考に検討が進められたのではないかとも推察される。 その連携の具体的方策は,平成22年7月30日法務省民事局民事第二課・日本土地家屋調査士会連合会とによる「筆界特定制度と土地家屋調査士会ADRとの連携の具体化について」として取りまとめられたところである。 これによれば,①記載内容を統一した相談票,②説明資料(共通のパンフレット),③統一した連絡票,を土地家屋調査士会ADRセンターと法務局筆界特定室とが共用することによって連携が図られるとするものである。 ①相談票及び②説明資料については,「事前相談における連携の場面においては,筆界特定制度,調査士会ADRについて,それぞれの制度の内容,効果,費用等を説明するとともに,それぞれの手続によってどのような解決を図ることができるのか,どのような限界(制限)があるのかといったことを十分に説明し,当事者が十分に理解した上で制度を利用することができるようにする必要があることから,相談票(別添1)及び説明資料(別添2)を作成した」ものであると言う。③連絡票については,「境界をめぐる紛争の総合的な解決という観点から,利用者に無用な負担をかけることなくスムーズな移行ができることが望ましい。しかしながら,調査士会ADRは,守秘義務はもとより紛争当事者双方の信頼関係に基づき実施される手続であるため,申立人のみならず,申立ての相手方への配慮が必要となる。また,筆界特定制度においても,公務員には守秘義務が課せられていることから,申請人のほか,対象土地関係人及びその他の関係人への配慮が必要となる。そこで,両手続の移行に当たっては,それらの者の同意を得るのが相当であり,調査士会ADRにおける同意書の例及び筆界特定制度における同意を得るための連絡文書案を作成した上で,連絡票(別添3)を作成した」ものであると言う。 また,「事前相談段階において,制度利用についての振り分けを十分に行うためには,事前相談を実施する両機関の職員及び相談窓口の担当者が紛争解決に係る各制度の内容等を十分に把握する必要があることはもちろんのこと,それぞれの機関が行う説明の概要を他方の機関においても承知しておくなどの必要もあると考えられることから,それぞれの機関で実施する研修会等に相互に講師を派遣するなどの連携を図るほか,連絡会・協議会等を設けて相互の連絡体制を確立するなどしていただきたい。」とされ,具体的な運用は各単位会境界センター・各法務局に委ねられた格好となった。 しかし,この連携には未だ多くの課題が残されている。 第一に,全ての境界センターが無料の相談機関を常駐しているとは限らず,その対応を境界センターが求められることである。センターの運営は土地家屋調査士会の経理によって賄われているのが実態であり,連携により過分な負担を強いられることになりかねない。 第二に,「筆界特定書等を除く筆界特定手続記録は,情報公開法に基づき,開示請求制度を活用することを想定しているところ,個人情報にわたる部分については,マスキング処理がされることとなるので,マスキングされた地番等については,調査士会ADRの手続の中で,当事者による再現が必要となる」ことから,手続き面における公平の観点が損なわれていることにある。両制度の迅速且つ効果的な連携を図るには,手続き法制面での改正も必要ではないか。さらには,ADR法での法務大臣認証を受けた境界センターには国からの補助金を助成するなどの方策を望みたい。 以上に紹介した連携は,手続き実施者側である境界センター・法務局側から見た調査士会ADRと法務局筆界特定制度両制度の連携ではあるものの,両制度の連携運用について十分熟知しておくことは,両制度を利用する立場である代理人としての認定調査士にも求められるものである。この連携がある程度予想されるような事案の場合にあっては,ADRの手続き代理人としての立ち位置と,筆界特定申請代理人としての立ち位置の両面を常に意識しながら代理業務を遂行する必要がある。そのためには,認定調査士業務に関する研鑽はもとより,常日頃から筆界鑑定に関する素養の修練が不可欠であろう。 |
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5.相談・面接技法(入門編) 文責:ADR認定土地家屋調査士 橋本 伸治 注:以下本掲は商事法務発行「法律相談のための面接技法」(日弁連法律相談センター面接技術研究会著)の内容を筆者が一部要約し加筆したものです。 ①相談・面接技法の必要性 相談者が専門家へ相談する前に,一般市民が自ら進んで境界に関する境界知識・法律情報・判例情報などの知識を身につけることは比較的容易な時代であり,そのため調査士・弁護士が提供すべき法情報はより高度のものが求められる傾向にあります。相談においては専門家からの単純な知識の切り売りではなく,相談者が真に求めるものの十分な理解の上で解決策を提示する,或いは相談者が問題解決のためになすべき判断形成を援助する技術を身につけるべき必要があります。 ②相談での難しさ ◇聴くことの難しさ 相談者が考える法的事実は,必ずしも専門的な視点からの法律問題であるとは限りません。また,真の法律問題が相談者の意図するものとは違ったり,相談者に自覚されていないものである場合も少なくありません。しかし,専門家が相談者の周辺的な発言を遮ってばかりいては,相談者は萎縮し,反発し,十分な事実の把握や相談者の意図の把握が困難でありましょう。そこでは相談者の日常的な語りの中から法的事実(境界問題での事実)を発見し,法的結論を発見することが必要となります。そのため相談者の話を根気よく聴き,それによって相談者を十分に語らせることが求められます。 ◇結論を発見した後に,それを正確に相談者に理解させる難しさ 法の内容は一般市民にとって必ずしも理解が容易なものとは限りません。説明無しの結論を押しつけられても納得できるものではないでしょう。相談者も自らの生活の中から導き出した自分なりの法感覚を有しているものであり,そういった相談者個人の法感覚を客観的な法感覚と一致させ,相談者の中に法の内面化を生じさせる作業が求められます。 ③コンサルティション型相談からカウンセリング型相談へ 専門家が一方的に評価し,単なる知識の提供をするという手法(コンサルティション型相談)では相談者が真に満足しうる結果とは言い難いでしょう。時に,相談者自身が自覚していない問題の核心に導いたり,問題の解決に当たって相談者が自律的な決断を援助する,という自立的紛争解決の援助を行うこと(カウンセリング型相談)がこれからの専門家相談業務には求められます。 ④環境整備 ◇相談者が入りやすい環境であること 相談者としては,できれば行きたくないという気持ちを押して来訪するのが正直なところでしょう。相談を行う場所は相談者を拒絶するような環境であってはなりません。 ◇プライバシーの保護 相談者は自分の相談事を他人に知られたくないという気持ちを強く抱くものです。専門家の守秘義務を説明しながら,外部に相談内容が漏れないよう最大限の注意を払うことが必要です。 ◇暖かみのある雰囲気 専門家はつい一段上から見下ろすような事務的な相談になりがちでありますが,相談者はお客様であるという姿勢を持ち,暖かみのある雰囲気を醸し出すよう配慮することが必要です。 ◇リスクマネージメント 相談者が深刻な問題を抱えている場合などでは,専門家の回答が相談者の意に沿わない場合に,時として感情的になったり激昂する場面もありえます。これらの事態にどう相談員の身の安全を守るかと言うリスクマネージメントも考えておく必要があります。 ⑤相談員に求められる資質 相談員は,相談者が最初に出会う人であり,最初の出会いにおける印象は,相談本番に臨む相談者の心的状態に大きな影響を及ぼします。相談者は不安感や緊張感を持って来談されることから相談員の対応に対して,平常より敏感に反応する傾向にあるため,次のような点を注意する必要があります。 ○対人面接における柔らかさを持っていること ○相談内容に限らず相談者の様々なニーズを感じ取れる感受性が十分にあること ○基本的に事務的であるが,決して事務的になりすぎないこと,すなわち相談者との間で適度な距離感を保てること ○細かい配慮をすると同時に,その配慮を相談者に感じさせないこと ○自傷他害等の危険性を察知して,危険を回避する技術を持っていること ⑥3つの「きく」ということ ・「聞く」・・・音や声を耳に感じ認める ・「聴く」・・・聞こえるものの内容をよく理解しようと思って,進んできく ・「訊く」・・・尋ねたり,問いただす 相談における「きく」行為とは,基本的に,相談者より持ち込まれた相談内容に対し,調査士・弁護士としての適切なアドバイスをするために行われるものであることから,相談者の話にじっくりと耳を傾け,相談者の相談内容や意向を確認するという側面を持ちます。 この意味で,「聴く」という姿勢が基本的に必要とされますが,問題点の適正な形での解決を模索するため,或いは,現実的な観点からより適切な解決手段の選択のために,ある程度真実追究的な形で,問いを連ねることが必要な場面もありえます。その意味では場面に応じて「訊く」事も必要となります。 ⑦相談のプロセス 相談者に相談の概要を話してもらう ↓ 相談員が相談内容の正確な事実関係とその法的問題点,相談者のニーズ(相談の目的・動機等)を把握するために更に補充的な聴き取りをする ↓ 相談者のニーズに応じて法的なアドバイスをする ↓ 相談者がアドバイスを理解し,納得する ⑧相談に入る前の留意点 ・予断を排除する 事前に記入された相談票を参考としながらも,相談者自身の口から予断を持つことなく直接話を聴くことが必要です。 ・カウンセリング的対応をする カウンセリング型相談では,「共感」,「受容」,「傾聴」の3要素が重要です。 ⑨「聴く」対象の客観面と主観面 ・「聴く」対象の客観面 相談は,ある相談内容(事件)に関し,法的なアドバイスを提供しようとするものであることから,正確且つ適切なアドバイスをするためには,その前提として,事実関係の正確な把握が必須条件です。 ・「聴く」対象の主観面 適切な法的アドバイスをするためには,相談に訪れた相談者が,どのような目的・要望(ニーズ)を有しているのかを把握することもまた重要です。 ・「聴く」対象の客観面と主観面の交錯 この二つは,相談者の口から語られる際には渾然一体となっている場合が多く,相談者から得られる事実関係の情報(客観面)が,ニーズ(主観面)によって歪められていたり,偏っていたりすることも少なくありません。また,相談者の事実関係(客観面)についての誤解が,ニーズ(主観面)を自ずから埋もれさせてしまっているような場合もあります。 如何に正確な情報を聞き出すか,如何に相談者のニーズを掘り起こして,法的救済に資するアドバイスをするかも,相談者の聴き取り技術にかかってくることになります。 ⑩情報収集以外の側面での「聴く」行為 ◇相談者の属性を判断するための「聴く」行為 相談者が,一定の法的知識を有しているのか?全くの素人か?この両者の間のどの辺りに位置するのか?また,激しやすいタイプか?執着心が強いのか?細かい点に配慮する方か?大雑把な方か?等々,相談者自身の属性を確認することによって,「聴き方」自体を選択し,相談者とのコミュニケーションをスムーズにするとともに,相談内容の信憑性を判断して,適切なアドバイスの方法を見つけ出すヒントとなります。 ◇「癒し」の意味での「聴く」行為 相談に訪れる人々の大多数は,何らかの形で「傷ついた」人々です。こういった人々の痛切な願い・想いを如何に確実に,誠実に受け止め,相談者に「癒し」を与えることができるのかと言うことも極めて重要なポイントです。 ◇専門家に対する信頼感醸成のための「聴く」行為 相談者は,まさに自分の悩みを「聴いてもらいたい」から相談に訪れる訳ですが,その一方,専門家(調査士に限らず弁護士も)は,とかく評価したがる職能集団であり,相談者から見れば十分に話を聴いてもらえなかったという不満やストレスを持ちながら相談を後にするケースが少なくありません。個々の専門家が,個々の相談内容に丁寧に耳を傾けることによって,相談者のその日限りの満足にとどまらず,調査士(弁護士)と言う専門家の存在自体に対する信頼感を醸成することにもなります。 ⑪相談を受けるに際しての基本的態度(バイステックの原則) ○個々の相談者をそれぞれ別個の個人,主体性をもった存在として尊重し,決してないがしろにするような態度に出ないこと。 ○相談者の感情表現も含めて十分受け止めるように配慮し,相談員が相談者の感情に共感を示すよう,きめ細やかな対応を心がけること。 ○相談者の立場や感情等をそのままの姿で理解し,訴えをしっかりと受け止める姿勢を示すこと。 ○相談者を一方的に非難しないこと。相談者の感情表現に対する否定的な意見は避けること。 ○相談問題の解決のための方策の提示・説明を通じて,相談者による適切な自己決定のための方向性を明らかにするとともに,このような過程を経て得られた相談者の自己決定を尊重すること。 ○相談者の相談内容については,その秘密を厳に守るという態度を示すこと。 ⑫「聴く」ための基本的技術 ・雰囲気作り 「うんうん」,「なるほど」,「そうですか」等,相談者の言ったことに相づちを打ちながら話を聴く。 但し,あまり頻繁に行ったり,間合いを詰めすぎると,相談者はせかされているという印象を受けてしまうので注意。 ・反射・要約(サマライジング) 相談者がある程度話したところで,その要点を捉えて,「~と言うことですね」とか「~という訳ですね」と言った形で,相談者の言ったことを繰り返し,確認してみせる。これによって相談者は,相談員が自分の話をしっかりと聴いていてくれることを確認し安心する。 ・明確化 相談者の話す内容があまりはっきりしない場合,相談員の方で,その内容を代わって言語化してやることで,相談者の自己理解を助け,発話を促すことができる。 ・支持 相談者の発言に対し,必要に応じて相談員が励ましやいたわりを述べる。「そうでしたか,それは大変でしたね」と言った言葉を差し挟みながら,相談者の話を聴くことによって,相談者をリラックスさせ,話すことに自信を持たせることができる。但し,安易な支持は無責任な印象を持たせ,また不法な要求さえも肯定したかのような間違った印象を与えかねないので,真に話を聴いた上で,必要に応じて行うことに注意する。 ・質問(リード) 相談者の話す事柄で,わかりにくいところ,漠然としているところ,気になったところ等を問い直すこと。不明確でわかりにくい部分は,相談者自身にとっても曖昧である場合が多く,問い直されることによって自分の考えや希望が明確になったり,より深く考えたりすることになり,自己理解に資する。 ⑬質問の仕方 ◇オープン・クエスチョン(開かれた質問) 特に回答の仕方を特定せず,話し手が自由に話せるような形での質問の仕方です。 例えば,「その時の状況を見たままの形で話して下さい」と言ったものです。 (メリット) 相談者に自由に語らせるだけに,回答内容の正確性が高い。 相談導入期において,相談者の自由な語りを促す意味では有用である。 (デメリット) 必ずしも必要なことのみを相談者が語ってくれるとは限らず,情報量の点では必ずしも十分ではない。 ◇クローズド・クエスチョン(閉じた質問) 回答者の答えとして,一定の内容を選択させる形での質問の仕方です。「はい」,「いいえ」で答えることを要求する質問がその典型です。例えば,「その杭を抜いたのは貴方ですか?」と言ったものです。 (メリット) 質問者が内容を特定して聞く傾向にあるから,必要な情報を聞き出すのに適しているので情報量の点では問題は生じにくい。 相談展開期においては,事実の最終的確認を行うという役割をもつので有用である。 (デメリット) 質問事項を絞り込むことから,誘導の可能性が高まり,情報の正確性の点においては問題が生じる場合がある。 ◇誘導質問 質問の中に,回答者の答えが暗示された形での質問です。 例えば「貴方はその時どのようにお感じになりましたか?」の質問を,「貴方はそのとき不快に感じたと思うのですが,どうですか?」と言った質問に変えると誘導の要素が生じてくる。 誘導質問は,相談者の自由な回答を遮るものであり,法律相談においては用いることの無いように注意すべきでしょう。誘導要素は無意識のうちにも質問に入り込む場合があるだけに注意すべきです。 ⑭相談の基本的進め方 ◇導入期 まずは,相談者の話を聴き,事案の概要と当事者のニーズを把握する段階です。 この時期は,相談員はあまり介入的にならず,相談者の語りを十分に聴くことが重要です。 ◇展開期 導入期での収集された事案に関する情報や,当事者のニーズを元に,相談員が法的判断を下すために必要な情報を掘り下げていく段階です。 この段階では,特定された事柄についての情報収集が中心になるので,質問形式としては,クローズド・クエスチョンを用いる機会が増えるでしょう。 ◇終結期 先行する導入期・展開期で収集した情報を元に,法的判断・対処方法等,相談の結論部分を伝達する段階です。 この段階は,相談員からの情報提供が中心となり,相談者に伝達するに際しては,自らの情報が相談者の求めたものに合致しているかを十分確認しながら情報提供を行うよう注意すべきです。 ※最低限の注意事項として,展開期と導入期を逆転してしまい,相談員から細かな質問をした後に,相談者から改めて事件の全体像を聴き直さなくてはならないと言ったことや,事件の全体像を十分に聴いていないがために,重要なポイントを聞き落としてしまったと言うことが無いように,相談の構造性を考え,十分に注意すべきです。 |
ADR法検討会委員構成 |
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復興の今こそ根本的な土地制度の見直しを | 平成23(2011)年5月27日東京財団発表 平野秀樹 研究員、国土資源保全プロジェクトリーダー 吉原祥子 研究員兼政策プロデューサー |
地下水規制を始めた自治体 | 平成24(2012)年1月18日東京財団吉原祥子研究員発表 |
外資買収に見る、日本の甘過ぎる土地制度~「消えた土地所有者」の解明を急げ~ | 平成24(2012)年9月5日日経ビジネスONLINEより |
国は「所有者不明化」の実態と土地制度の不備を直視すべき | 平成25(2013)年4月16日東京財団吉原祥子研究員発表 |
水循環基本法を読み解く~抜け落ちた「土地所有者」の観点 | 平成26(2014)年東京財団吉原祥子研究員発表 |
成長を続ける21世紀のために 「ストップ少子化・地方元気戦略」 | 平成26年5月8日発表 日本創生会議・人口減少問題検討分科会 |
特別対談 増田寛也 日本創生会議・人口減少問題検討分科会座長に聞く |
平成26(2014)年8月15日インタビュー 聞き手:野村資本市場研究所理事長 渡部賢一氏 |
土地の所有者不明化の実態把握に向けて~相続未登記と固定資産税実務に関する全市町村アンケートを実施 | 平成26(2014)年9月18日東京財団吉原祥子研究員発表 |
農地集積に向け土地制度の再考を~高齢化・地価下落を見据えた国土保全の仕組みが必要 | 平成26(2014)年12月22日東京財団吉原祥子研究員発表 |
地域社会が抱える所有者不明問題と その解決に向けた道筋 | 平成27年9月 月報 司法書士 2015.9月号(日本司法書士会連合会)~三菱 UFJ リサーチ&コンサルティング(株)主任研究員 阿部 剛志氏 |
所有者の所在の把握が難しい土地 への対応方策最終とりまとめ(本文)/(概要) | 平成28 年3月発表~所有者の所在の把握が難しい土地 への対応方策に関する検討会(国土交通省) |
土地の「所有者不明化」 | 平成28(2016) 年 3 月発表~東京財団政策研究・「国土資源保全」研究プロジェクトにおける研究成果・吉原祥子氏 |
自治体アンケートが示す土地の「所有者不明化」~人口減少時代の土地法制整備が急務 | 平成28(2016)年4月27日東京財団吉原祥子研究員発表 |
所有者不明の土地が提起する問題-除却費用の事前徴収と利用権管理の必要性- | 平成28(2016)年10月発表~富士通総研(FRI)経済研究所 主席研究員 米山秀隆氏 ※所有者がわからない土地が全国で増えている。本稿では、所有者不明の土地のうち、主に宅地に関する問題で、建物が建っている場合、除却費用をどのように捻出すべきか、また、所有権の制約を超えて、利用をどのように促進していくかべきかについて考察した。 除却費用については、代執行、略式代執行で費用を回収できず公費投入となっている現実があり、除却費補助という形でも公費投入が行われている。この打開策としては、必ず所有者が負担することになるよう、毎年の固定資産税に、除却費に充てる分を少しずつ上乗せして徴収していく仕組みが考えられる。 所有権の問題については、中長期的には利用優先の法整備を行う必要があるが、当面は所有と利用を分離したり、所有権を積極的に次の所有者に移転させていく仕組みを構築し、利用の促進を図っていく必要がある。 |
「所有者不明化」問題から見える土地制度の根本課題―人口減少時代に対応した制度構築を― | 平成28(2016)年11月30日東京財団吉原祥子研究員発表 |
電子政府から見た土地所有者不明問題-法的課題の解決とマイナンバー- | 平成29(2017)年1月発表~富士通総研(FRI)経済研究所 主席研究員 榎並利博氏 ※本研究では、土地所有者不明問題が起きる原因を明らかにし、実際に現場ではどのような問題が起きているのかをインタビュー調査などをもとに整理した。そして、行政における土地所有者の情報がどのように流通し活用されているのかを明らかにし、問題の根源となっている不動産登記制度見直しの重要性を指摘するに至った。 ただし、不動産登記制度の見直しについて、現在の法理では所有者の登記義務と登記官の管理義務を法的に根拠づけることができない。これを解決するためには、「強い所有権」と「登記の公信力」という法的な壁を乗り越える必要がある。 具体的には、次の短期的解決方法と長期的解決方法を同時に開始し、土地所有者不明問題を解決していくべきと考える。 |
所有者不明土地問題研究会の発足について | 平成29年1月発表 一般財団法人国土計画協会より転載 「人口減少社会において、国土管理上の課題も質的に転換をしており、空き家・空き地・耕作放棄地など利活用を放棄された不動産が急増しています。なかでも所有者不明土地は、日本の人と国土の関係性の時代的変化を象徴する問題で、日本の近代化以来の財産権のあり方とも関わる本質的な課題を提示しています。 日本の各地で、災害復旧、道路整備、山林管理、農地の集約、地籍調査、土地区画整理といった公共のための事業を進める際に、所有者不明土地はコスト増要因、所要時間の延長要因となるだけでなく、民間においても土地の有効利用や放棄・放置不動産の管理を進める上で大きな障害となっています。 相続未登記が連鎖することで、問題は時を経るに従ってネズミ算的に拡大し、人口減少社会の日本の将来にとって、ボディーブローのようにマイナスの影響を与えかねない問題です。しかも、この問題は、現時点では国民にとって中々身近に感じることがなく、気がついたときには既に対応が困難になってしまうというやっかいな性格を有しています。 このような背景を有する所有者不明土地問題に関して、その実態を調査し、それが将来の日本社会に与える経済的・社会的な影響の深刻さを推計し、できる限り分かりやすく国民に提示すること、また、この問題の根源にある時代に合わなくなっている土地制度とその運用の課題を明らかにし、その解決のために新たな仕組みを提案することを目的としています。こうした民間プラットフォームの政策提言によって国民の関心が高まり、政策課題としての認知が進むことが期待されています。」 |
所有者の所在の把握が難しい土地 に関する探索・利活用のための ガイドライン (第2版) ・概要版 |
平成29 年3月 発表~所有者の所在の把握が難しい土地 への対応方策に関する検討会(国土交通省) |
土地の「所有者不明化」 ―自治体アンケートから見える問題の実態― | 平成29年 土地総合研究 2017年春号発表 東京財団研究員 吉原祥子氏 |
所有者所在不明⼟地問題の論点整理 | 平成29年 土地総合研究 2017年春号発表 一般財団法人土地総合研究所・早稲⽥⼤学⼤学院法務研究科教授 ⼭野⽬ 章夫氏 |
過少利用時代における所有者不明問題 | 平成29年 土地総合研究 2017年春号発表 神戸大学大学院法学研究科教授 角松 生史氏 |
土地所有権の放棄は可能か | 平成29年 土地総合研究 2017年春号発表 早稲田大学大学院法務研究科教授 吉田 克己氏 |
土地所有権の放棄 ―所有者不明化の抑止に向けて― | 平成29年 土地総合研究 2017年春号発表 札幌学院大学 法学部 教授 田處 博之氏 |
人口減少下における国土の適切な管理に向けて ―法定外公共物の経緯から学ぶこと― | 平成29年 土地総合研究 2017年春号発表 一般財団法人土地総合研究所 研究理事 丹上 健 氏 |
人口減少下における土地の所有と管理に係る今後の制度 のあり方に関する研究会 平成 年度とりまとめ | 平成29年 土地総合研究 2017年春号発表 一般財団法人 土地総合研究所 |
提言~所有者不明土地問題の解決に向けて~ | 平成29年4月6日発表 自由民主党「所有者不明土地問題」に関する議員懇談会より ~指定都市市長会 会議資料から転載 |
中間取りまとめ ~所有者不明土地問題の克服により新たな成長へ~ |
平成29年5月31日発表 自由民主党政務調査会「所有者不明土地等に関する特命委員会」より |
所有者不明の土地、公的利用へ新制度着手 道路や公園に | 平成29年6月1日朝日新聞デジタルニュースから転載 政府は、相続登記されないまま所有者が分からなくなっている土地を、公的な事業に利用できるようにする制度づくりに着手した。「資産価値がない」などの理由で放置される不動産が増え、防災や都市計画の妨げになるケースが出てきているためだ。 |
不動産登記簿における相続登記未了土地調査について | 平成29年6月6日発表~法務省 ※土地の所有者が死亡した後も長期間にわたり相続による所有権の移転の登記等(相続登記)がされず,所有者の所在の把握が困難となり,公共事業に伴う用地取得等に支障を来すなどのいわゆる所有者不明土地問題が顕在化しており,社会的な関心を集めています。 法務省では,この問題に対応するための方策の検討のため,大都市,中小都市,中山間地域などの地域バランスも考慮しつつ,全国10か所の地区(調査対象数約10万筆)で相続登記が未了となっているおそれのある土地の調査を実施しました。 |
土地利用行政に関する特別提言 | 平成29年6月7日全国市長会発表 |
所有者不明土地問題研究会中間整理 | 平成29年6月26日発表 一般財団法人国土計画協会より転載 |
持ち主不明の土地、九州より広く 「満州国在住」登記も | 平成29年6月26日朝日新聞デジタルニュースから転載 相続未登記などで所有者が分からなくなっている可能性がある土地の総面積が、九州より広い約410万ヘクタールに達するとの推計結果を、有識者でつくる所有者不明土地問題研究会(座長・増田寛也元総務相)が26日公表した。こうした土地の増加は、森林の荒廃や土地取引の停滞などにつながるとして、研究会は年内に対策案を政府に提言する。 |
所有者不明土地対策の推進に関する提言 | 平成29年7月6日指定都市市長会発表 久元喜造 神戸市長(指定都市市長会 総務・財政部会 部会長)が法務省及び国土交通省に対して、「所有者不明土地対策の推進に関する提言」を行いました。 |
土地の『所有者不明化』問題の実態に迫るーー著者 吉原祥子研究員に聞く | 平成29年7月26日東京財団吉原祥子研究員発表 |
要らない土地が“所有者不明”に人口減時代の「受け皿」作れ | 平成29(2017)年7月26日東京財団吉原祥子研究員発表 |
所有者不明土地、法務省が本格調査へ 24億円予算要求 | 平成29年8月31日朝日新聞デジタルニュースから転載 法務省は、相続登記されずに所有者がわからなくなっている土地の本格調査に初めて乗り出す。公共事業の妨げになる事例もあることから、所有者を割り出して登記を促すという。費用として約24億円を来年度の当初予算の概算要求に盛り込んだ。 |